私がスケッチに行く時に心掛けていることは、「描くものを決めつけないでおく」ということです。
まずはスケッチに行った場所を一回りして、心に残るポイント(スケッチ候補)を2〜4か所ピックアップします。
一通り見た後、候補のポイントをそれぞれ思い出しながら、その日のスケッチポイントを決めます。
たとえバラを描きに行ったとしても、その日そこにあったいくつものバラが、どれも私に何も語りかけてくれないと感じる時は、
もっと「これは!」と思う何かを探します。そして、ひとたび決めたらそこで絵が良くなるまで頑張ります。
時には前日に下見をしておいて翌朝狙っておいたポイントで描くこともありますが、
花のような移ろいやすいモチーフは、数時間前には良くても半日後に同じ姿を見せてくれるとは限りませんし、
なにより自分の心が予定調和になってしまうと、感動が薄れ、ただ職人的に手が動いて描き写すだけの行為になってしまいがちだからです。
「今しかない」 この危機感が重要です。
万が一、今日きれいだと思った花が明日もそのままの姿でいてくれたとしても、翌日私がきれいだと感じる保証はない・・。
また、「これは予想もしていなかった」 という意外性(=新鮮さ?)も大事です。
この感覚は絵を描いていると、切実です。言葉の遊びなどではなく、気持ちが離れているときに、ただ手が動いて描いた絵が良くなった記憶は
ありません。(安定する生活が身につかないのも無理はない?)
やはり、ものづくりは「欠けている何かを穴埋めする」行為なのだと感じます。
コックさんも、腹一杯の時は、いい料理ができないと聞いたことがあります。程よく空腹であること。
そうであってこそ、そのすきっ腹を埋めたいと思う気持ちが創作の作業を後押しするのでしょう。